「文化を織りなおす」をミッションとして、日本文化に向き合い、ほぐし、新たな価値を添えて発信するカルチャーブランドAy(アイ)を運営しています。銘仙着物をアップサイクル(再利用して価値を高めること)した衣服や雑貨、地域の伝統工芸を取り入れた商品の開発と販売をしています。
人口減少に伴って消滅する地域が増える日本では、「持続可能な地域」が鍵となります。人口を保ち、資源が循環し、経済が活性化した地域をつくるために、①ビジョン②各セクター間のコミュニケーション③地域の特色を生かした付加価値を創出する―の3点が重要だと考えます。
ビジョンとは「将来のなりたい姿」を描くことです。それを言語化し、発信することで方向性や軸となり一貫した行動が起こせるようになります。どのような地域になりたいのか、どのようなブランドになりたいのかを議論し文字に起こすことで、誰に対してどのようなアクションをしていくのかが明確になっていきます。
今、私たちに必要なのはビジョンを議論することではないでしょうか。行政、企業、若年から高齢の市民、それぞれのセクターが集い、コミュニケーションを図る場です。
私は慶応大の4年生で湘南藤沢キャンパスに通っています。最近は学生が地域に入り、農業やプロジェクトを通して地元の人たちとの関係性ができています。先日、稲刈りに参加した際に、農家の方から「地域の人と学生と先生、みんなで今後の農家のビジョンを話し合いたい」との意見をいただきました。外部の人ではなく、地域の担い手が自分事として将来を見据えていると感じ、うれしくなりました。
地域には歴史や文化、伝統工芸や地場産業、コミュニティーの在り方、地域資源など、さまざまな特色があります。その土地ならではの特色を生かし付加価値を創出することで、オリジナリティーのあるストーリーが生まれます。
私の古里である伊勢崎市は、銘仙の生産量が最も多かった地域でしたが、需要の低下や職人の高齢化によって衰退してしまい、現在新しいものは作られていません。使われずにたんすの肥やしになっていたり、大量に廃棄されていたりする着物がある現状を目の当たりにし、アップサイクル事業を立ち上げました。
エネルギー排出量が少ないアップサイクルの手法を用いることで環境にも配慮しながら、伊勢崎市の素晴らしい文化を新しい形で世界に発信することが可能になりました。今あるもののまだ知られていない価値を発掘し、光を当てることで唯一無二のプロダクトを作ることができると考えます。
今後も文化を次世代に紡いでいけるよう、地域の皆さんと連携しながら行動していきたいです。
【略歴】2019年にブランドAy(アイ)を立ち上げ、コンゴ民主共和国の女性と協同で服作りを開始。20年に株式会社化。伊勢崎四ツ葉中等教育学校卒。慶応大4年。