北海道のご当地コンビニとして人気の「セイコーマート」が、遠く離れた関東地方の茨城県と埼玉県で店舗を増やしている。最近は群馬県境に近い古河市や加須市に出店。北海道と同様、店内で調理した温かい弁当や、道産の農畜産物を使ったオリジナル商品など、独自の店づくりで支持を集めている。津軽海峡を越えるまでもなく、利根川や渡良瀬川を渡れば群馬県民も北海道気分を味わえるのだ。

県境から30分

 群馬県東部の板倉町から車で30分余り。茨城県古河市の県道を走ると、フェニックスのロゴをあしらったオレンジの看板が目に入る。11月下旬にオープンしたセイコーマート古河駒羽根店。関東で最も新しい店舗で、群馬県境から10数キロしか離れていない。12月中旬の昼時に訪ねると、客が次々に訪れていた。

11月にオープンしたセイコーマート古河駒羽根店

 レジ横の目立つ場所にあるのが、弁当や総菜のコーナー「ホットシェフ」。ファンから強い支持を受けるセイコーマートの代名詞で、店内のキッチンで作った温かいカツ丼やフライドチキンなどが並んでいた。陳列棚のパンや菓子、飲み物などはオリジナル商品。道産牛乳を使ったアイスクリームなどは特に人気が高いという。

 店の担当者は「地元の茨城からだけでなく、群馬や栃木から来てまとめ買いする人もいます」と話す。

なぜ茨城・埼玉に

 セイコーマートの道内の店舗数は、コンビニで最多の1082店。さらに茨城県と埼玉県で計95店舗を展開している。遠く離れた関東地方の、しかもこの2県に根を張っているのはなぜなのか。

 同社によると転機は1992年、茨城県の地場コンビニ「マミーチェーン」が、セイコーマートブランドに切り替えたことだ。セイコーマートとマミーチェーンは、ともに地域の酒屋が経営強化のためコンビニに転換した歴史があり、80年代から店舗運営のノウハウを共有するなどエリアフランチャイズとして協力関係を構築。全国展開のコンビニの攻勢が強まる中、30年前にブランド名をマミーチェーンからセイコーマートに統一した。さらにセイコーマートは埼玉県の地場コンビニの事業も引き受け、関東2県への進出を果たした。

店内調理したカツ丼などが並ぶホットシェフ

 北海道で培ったノウハウをベースにしつつ、関東の消費者に合わせた店づくりを進めた。例えば総菜は北海道で一般的な1~2人分の小分けより、家族で食べる2~3人分の容量のほうがよく売れた。北海道ではあまりなじみがないせんべいなどの米菓が人気だと分かり、地元メーカーと取り引きして品ぞろえを増やした。

 「売れ行きを分析したり、茨城出身の社員と話し合ったりして、消費者のニーズを把握していきました」。茨城県への進出に携わり、現在は関東エリアの責任者を務める松岡雅貴さんは振り返る。

群馬への進出は?

 プライベートブランドの商品は北海道から輸送するほか、茨城県土浦市にも工場を設けて供給体制を整えた。店舗運営もフランチャイズからグループの直営へ徐々に切り替えたという。現在はほとんどの店舗がグループ直営だ。

 こうした経営努力が実を結び、一時は減少していた店舗数は増加に転じ、2021年は1店、22年は3店を新規出店した。利根川を挟んで板倉町と県境を接する埼玉県加須市では、加須向河岸店が19年にオープンしている。

茨城・埼玉両県の出店マップ。フェニックスのロゴが鶴舞う形の群馬に近づいているように見えなくもない(セイコーマートHPより)

 「群馬の皆さんにも、ホットシェフやセイコーマート独自の商品をぜひ味わっていただきたい」と松岡さん。気になる群馬への出店の可能性を問うと、こう答えてくれた。「配送体制などさまざまな課題はありますが、関東圏での店舗を増やしたいという気持ちはもちろんあります。まずは関東で100店を目指したいですね」