私は「文化を織りなおす」をミッションに掲げ、カルチャーブランドAy(アイ)を運営しています。銘仙着物をアップサイクルした衣服や雑貨、地域の伝統工芸を取り入れた商品を開発しています。
「文化を織りなおす」とは、紡がれてきた文化に向き合い、ほぐし、新しい価値を添えて発信することです。先人が生み出した文化の良さを抽出し、現代の変化に寄り添うコンセプトからデザインを考えます。
活動するうちに、自分は産業を分かりやすく大衆に伝えられる存在であるべきであり、そうありたいと強く思うようになりました。最近は「産業をかみ砕く存在であれ」と意識しています。
こう考えるようになったのは、「良いものを作っても伝わらなければないに等しい」と痛感したことがきっかけです。
私はアイを通して、銘仙や日本文化を生活に取り入れて皆さんに良さを感じてほしい、そして皆さんと新しい文化を共創していきたいという思いを持っています。ただ、銘仙はニッチな文化で県内でも知る人は少ないため、伝えることに苦労することがあります。
しかし、どの産業でもその分野に精通している専門家は大衆に向けて分かりやすく発信する役割があると考えます。それによって理解が広がり、世の中に普及していくのでしょう。つまり、産業とユーザーの間にいる翻訳家のような存在・共通言語が重要なのです。
アイという存在が伝統産業とユーザーの間に立ち、産業の魅力を引き出し、ユーザーの需要をくみ取ることで、新たな価値を創ることができると考えています。これは当社が掲げるミッション「文化を織りなおす」につながります。
その新しい挑戦の一つとして、現在、伊勢崎市内の老舗企業の皆さんとコラボレーション商品を制作しています。私はそれぞれの専門分野をかみ砕き、再編集・リデザインしていくことを担当させてもらっています。
私自身は素人の視点で基本から学び、製品を体験し魅力を感じる中で、従来とは異なる新たな角度で表現してみたらどうかとか、対象ユーザーが手に取りやすいデザインを作ろう、などと顧客目線で考え、商品を開発しています。産業にどのような課題があり、どのような解決策があるのかを明確にし、各社のオリジナリティーのある形を作っています。うれしいことに私の郷里、伊勢崎で「文化を織りなおす」コラボレーションが実現しました。
ファッションやライフスタイルの一部として発信することで入り口を広げられるよう、今年はよりさまざまなコンテンツを通してアイを伝えていきたいと考えています。
産業をかみ砕き、デザインを通して、その魅力を発信できる存在になりたいです。
【略歴】2019年にブランドAy(アイ)を立ち上げ、コンゴ民主共和国の女性と協同で服作りを開始。20年に株式会社化。伊勢崎四ツ葉中等教育学校卒。慶応大4年。