家庭の事情で塾に通えなかったり、居場所がなかったりする子どもたちを支援しようと、都内から群馬県前橋市に移住した浜松敏廣さん(46)、和香子さん(44)夫妻が同市上小出町に個別指導型学習塾と自習室を開設した。原則無料で食事付き。塾では前橋高、前橋女子高の生徒らがボランティアで指導に当たる。日本ユネスコ協会連盟(東京)の助成のほか、民間企業、団体から協賛金や教材、食材の提供を受けて運営しており、夫妻は「温かい疑似家庭を求めている子どもは多い。そういう場所にしたい」と話す。
2人は2008年、環境啓発と教育支援活動に取り組むNPO法人「維新隊ユネスコクラブ」を設立。敏廣さんが理事長、和香子さんが事務局長を務める。敏廣さんは自身の経験から、教育格差が生まれる要因は所得の差だけではないと考えていた。「家庭不和で勉強ができる環境になかったり、いじめで不登校になったりして、勉強についていけない子どももいる」
居場所を提供しようと、14年に誰もが通える食事付きの無料個別学習塾「ステップアップ塾」を都内に開設した。15年には和香子さんの出身地、前橋市に移住。昨年12月、同市上小出町に前橋敷島教室を開いた。現在は都内と北九州市を含め計4カ所を運営する。
前橋敷島教室は、日本ユネスコ協会連盟と連携する初めてのケース。塾は小学4年生から中学生が対象で、毎週土曜午後4時~6時半で算数(数学)と英語が学べる。業者から提供を受けたテキストは自由に使え、テストに慣れてもらうため、定期的に学力テストも実施するという。食事は手作りを心がけている。
講師陣もサポートに意気込む。前橋女子高3年の青木恵理さんは「多様な生活環境の子どもたちと交流を深め、高校では触れることのできない価値観に出合うことが視野を広げるきっかけになる」、前橋高1年の栗原悠輔さんは「誰にとっても居心地が良いと思える空間をつくり、一緒に盛り上げていきたい」と話す。
一方、大人と距離を置きたい小学生から高校生に勉強場所を提供するのが自習室だ。平日午後6~9時に開かれ、原則、講師はいない。1時間以上利用する人には軽食が付く。
敏廣さんは「あったらいいなと思う塾、自習室を設けた。前橋から全国に広げたい」と話す。自習室は空き家などを活用し、全国の中学校と同数の約1万カ所の設置を目指している。
塾は年収141万円未満の家庭が無料、年収282万円未満は月2000円、それ以上は同4000円の参加費を払う。希望者は同法人事務局に電話(☎050-7110-1820)かメール(ask@ishintai.org)で問い合わせる。