ワカサギ釣りとアユ釣りの造詣が深い釣具店。店主の松田克久さん(53)は、アユ釣りの全国大会で優勝した経験もあるベテランで、豊富な知識を生かしたオリジナル商品を展開する。特にワカサギ釣り用品は全国有数の品ぞろえを誇り、県内外から釣り師が集う。
ワカサギ釣り用は、近年主流になっている電動リールに加え、昔ながらの手ばね竿(ざお)も扱う。電動リールは水深表示や巻き上げ速度の変更ができて便利だが、魚が餌に食い付いた際の「アタリ」を感じ取るには、今でも軽量な手ばね竿が優れているという。
電動リールは「シマノ」や「ダイワ」といった大手メーカー製を取りそろえる。手ばね竿は、素材や形状にこだわったオリジナル商品も提供する。
オリジナル商品を展開する理由には「釣り場には癖があり、それに応じた道具が必要」という松田さんの持論がある。例えば、赤城大沼は他の湖と比べてワカサギが幅広い水深に生息しているといい、既製品よりも長い仕掛けを作って販売している。
アユの友釣り向けには、2本の針を間隔を空けて配置した「2本ヤナギ」を用意。3、4本の針を船のいかり状に束ねた「いかり針」を1カ所に付けるのが一般的だが、「針が軽い分おとりが泳ぎやすく、離れた場所にも針があることで近寄ってこないアユも釣れる」と利点を強調する。
松田さんは旧榛名町(高崎市)出身で、榛名湖でワカサギ釣りを覚えた。ワカサギ釣りは40年、アユ釣りは35年超の経験があり、2007年に「シマノジャパンカップ鮎(あゆ)釣り選手権」で優勝。勤めていた釣具店から独立して同年、妻の悦子さん(51)と共に「つりピット!」を開いた。
「自分の経験を踏まえて本当に釣れる道具を製品化している。個人店の強みを生かし、初心者にも丁寧なアドバイスをしていきたい」と力を込める。
記者のトレンド予測 漁場多く素人でも釣果
「県の魚」に指定されているアユだが、近年は漁獲量の減少とともに釣り人は減っている。一方で勢いがあるのがワカサギ釣り。初心者でも釣果を得やすく、新たに始める若者も増えている。
県内には赤城大沼や赤谷湖、鳴沢湖といった豊富な漁場があり、氷上の穴釣りやボート釣り、桟橋釣りなどが多様な形で楽しめる。「ワカサギなら素人でも釣れるよ」。子どもの頃に一度やったきりの記者も、松田さんの言葉に背中を押される思いがした。
【メモ】毎週月曜と第3火曜定休。平日と土曜は午前10時半~午後8時、日曜と祝日は午前10時~午後7時。問い合わせは同店(☎027-384-3390)へ。