測定用の端末を装着した高崎高の生徒

 子どもの睡眠と健康の関係を明らかにしようと、東京大などの研究グループが、国内で大規模な睡眠の実態調査「子ども睡眠健診プロジェクト」を始めた。小中高校生らに腕時計形の端末を装着して1週間生活してもらい、腕の動きから睡眠の状態を測定。群馬県の高崎高の生徒約500人も参加した。2025年度までに3万~5万人分を目指しており、研究の基礎となる膨大な「ビッグデータ」を収集する。

 調査は東京大大学院医学系研究科の上田泰己教授らのグループが行い、主要な研究者3人のうち1人が高崎高出身の特任講師、岸哲史(あきふみ)さん(40)。昨年12月に高崎高の1、2年生約500人も参加した。

 調査には、加速度を計測するセンサーを内蔵したウエアラブル端末(リストバンド)を使う。参加者に身に着けてもらい、1週間計測した後に回収する。データを収集し、睡眠の量や質などを解析する。

 睡眠の実態把握や睡眠パターンの分類などを通じ、子どもの健康改善に役立つ基礎的な研究につなげる。明確になっていない「健康的な睡眠」の科学的定義も目指す。研究グループによると、子どもの睡眠の客観的なデータは世界的に少ないという。

 毎月最大千人を目指し、昨年11月から本格的に計測を開始。学校や自治体単位などで協力団体を募集し、既に複数から参加申し込みがあった。参加者には個人ごとの睡眠のデータを返送し、睡眠の改善や意識向上につなげてもらう。

 高崎高は文部科学省が指定するスーパーサイエンスハイクール(SSH)の一環で、希望者が調査に協力。生徒が最先端の研究を体験する目的もあり、岸さんからオンラインで調査内容の説明を受けた。参加した1年の黒沢駿さんと細田晃佑さんは「卒業生の研究を体感できた」「睡眠と記憶力や思考力との関係を知りたい」と話す。

 岸さんは高校時代、サッカー部で「文武両道」に取り組む中、短時間でも眠ることが成績向上につながった経験があり、それが研究の原点という。理系出身で人間の身体に興味を持ち、脳波や心拍などの計測とデータ解析から睡眠を科学してきた。

 スマートフォンの普及など社会環境の変化で子どもの睡眠時間の不足が指摘される中、岸さんは「適切な睡眠は自己肯定感などのメンタルヘルス、学業、体力の向上といった教育現場の課題解決につながる」と強調。将来的には子どもの健康診断への睡眠測定の組み込みを目指す。

 測定への参加申し込みは子ども睡眠健診プロジェクトのホームページで受け付けている。