国内外で活躍する群馬県前橋市出身のピアニスト、菊池洋子さん(45)が今春から、オーストリア・ウィーン国立音楽大の「アシスタント・プロフェッサー」に就任した。音楽の都、ウィーンの教育機関でも最古級の歴史を持つ名門校で、日本人指導者は異例。菊池さんは「新たな挑戦や、現地でしか得られないものを自分自身に染み込ませ、古里へ還元したい」と意気込んでいる。
同大はピアノ専攻科のほか、指揮科や作曲科などがある音楽芸術の総合大学。200年以上の歴史があり、世界的指揮者のカラヤンや、前身校ではフランツ・シューベルトらを輩出している。
菊池さんは3月1日付けで、同大ピアノ演奏学部のアシスタント・プロフェッサーに就任した。学部長のクリストファー・ヒンターフーバー教授の下で学ぶ9人の学生に対し、マンツーマンで奏法指導をしている。個人指導は1人1回1時間半で、学生が課題を持ち込む形式。中には初演前の現代曲などもある。
関係者によると、同大でのピアノ指導はピアニストの今井顕さんが務めた経験があるが、伝統を重んじ、音楽に対する保守的な考えが色濃い同大では、日本人を含むアジア人が指導者を務める例は極めて少ないという。
ヒンターフーバー教授は、草津町で毎年8月に開かれる「草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル」の人気講師の一人。本県との縁は深いものの、菊池さんの就任は偶然だった。菊池さんは昨年9月、ウィーンでの演奏会に出演した際、同大での指導者ポストが空いたという情報を耳にし、すぐに応募。11月に再渡欧し、個別指導などのオーディションに臨み、今年1月に選ばれた。
2002年、モーツァルト国際コンクールで日本人として初となる優勝に輝いて以降、菊池さんは古典派楽曲を中心に国内外を舞台に演奏してきた。同大での仕事を「新たな挑戦」と考え、「指導経験が今後、私の演奏にどう影響するか楽しみ」と話す。
今後、ウィーンと日本との活動は半分ずつ程度になるという。「群馬でも、若い人たちとの交流ができたらうれしい」と笑顔を見せた。