群馬県高崎市のGメッセ群馬で先進7カ国(G7)デジタル・技術相会合が開幕した29日、会場では県内の小学生が各国要人を出迎え、初のG7会合開催を祝った。高校生はデジタル社会の当事者として、スクールサミット宣言を発表。夜には前橋市の迎賓館、臨江閣で「日本政府主催大臣夕食会」が開かれ、地元開催の会合は歓迎ムードに包まれた。

 
「アバ太郎」(右)と河野デジタル相

大臣そっくりの動き

 河野太郎デジタル相は、国内の企業や団体の先進技術を紹介した「デジタル技術展」(デジタル庁など主催)を視察した。重機や手術の遠隔操作など先端技術を体験しながら、約20のブースを精力的に回った。

 デジタル庁のブースでは、河野氏の姿と顔を持つアンドロイド「アバ太郎」と対面。横に並び、所作や声をじっと確かめた。「アンドロイド作成に興味があったら、本物の方の僕に声をかけて」と語りかけられると、大笑い。その後の会合でも「私よりもアバター(分身)に招待状が届いているようだ」と人気ぶりをアピールした。

ブースを視察する河野氏

 県内関連企業などのブースも回った。システム開発のクライム(前橋市)は、災害時の避難者支援に役立つシステムを紹介。同社のホルムストゥルム・アントンさん(28)は「関心を持って聞いてくれ、デジタル技術への熱意が伝わった」と充実した様子だった。県デジタルクリエーティブ人材育成拠点「ツクルン」のブースにも立ち寄り、体験する子どもたちに「すごいね」と笑顔で声をかけた。

白杖で危険な場所のデータ収集

 開幕に合わせたオープニングセッションでは、各国要人らが集まる会場で、県内の高校生がデジタル世代の当事者として、目指すべき社会について堂々と発表した。デジタル技術を社会に還元するための五つの行動指針を宣言し、会合に臨む関係者に向けて賛同を呼びかけた。

堂々と発表する群馬の高校生

 登壇したのは橘祐貴さん(前橋高)、依田望さん(前橋女子高)、高田悠希さん(高崎高)、佐藤柚花さん(桐生高)の4人。発表では、人工知能(AI)を搭載した白杖(はくじょう)で危険箇所のデータを蓄積し、インフラ整備に役立てる構想などを英語で披露した。デジタル技術を、多様な価値観を伝え合うために活用していくことなどを宣言した。

 河野太郎デジタル相は、人中心のAI活用などを提言した生徒の宣言に同意した上で、「時間と努力を費やした素晴らしい発表だった。誰ひとり取り残さない人間中心のデジタル社会を作っていきたい」と生徒の思いに力強く応えた。

上州牛ローストビーフ、やよいひめ大福…

 29日夜、前橋市大手町の臨江閣で「日本政府主催大臣夕食会」が会合出席者らを招いて開かれた。夕食会には38人が参加。政府関係者や山本一太知事らが、各国要人らをもてなした。

 冒頭、松本剛明総務相が「臨江閣はもてなすための建物と聞く。群馬の皆さまの協力に感謝する。この会合が世界に向けた前向きなメッセージになると確信している」とあいさつした。県産のスパークリング日本酒を手に取り、太田房江経済産業副大臣が乾杯の発声をした。

各国の国旗がデザインされただるまが会場に並んだ

 夕食会では地元産食材を中心に、外国の要人向けにナイフとフォークで食べられる日本料理を提供。野菜は全て県産で、上州和牛を使ったローストビーフのすき焼き風、ギンヒカリの焼き魚、上州麦豚の煮物、県産卵の茶わん蒸し、やよいひめのイチゴ大福など「オール群馬」の料理がテーブルに並んだ。参加者は食事を楽しみながら歓談した。

 参加したのはG7のほか、招待国のインド、インドネシア、ウクライナ、国際機関の要人ら。日本政府からは松本総務相、河野太郎デジタル相のほか、山本知事と尾身朝子総務副大臣も参加した。

小学生と女将が出迎え

 G7会合が始まるのに合わせ、各国の要人らは午前9時ごろ、高崎市のGメッセ群馬に続々と到着した。入り口で高崎城東小の児童19人と、宿泊した伊香保温泉など県内温泉旅館の女将(おかみ)、県マスコットのぐんまちゃんが出迎えた。

関係者を明るく出迎える小学生たち

 児童らは英国や米国など、次々と現れる要人の国に合わせて国旗を振り、「ハロー」などと声をかけて歓迎。「群馬高崎へようこそ」と英語のメッセージを記した横断幕も掲げた。

 明るい出迎えに関係者らは手を振ったり、握手したりしてにこやかに応えた。ぐんまちゃんと記念撮影する要人もいた。

通信強靭化で日独が協力

 松本剛明総務相は、ドイツのヴィッシングデジタル・交通相と会談し、5Gネットワークの開発など通信インフラを強靱化する協力覚書に署名した。松本大臣は両国は技術立国として共通点は多いとした上で、「通信インフラを構築し、産業分野での具体的な協力を深めたい」と語った。

覚書に署名した日独の大臣(右が松本総務相)