多くの人に愛され、繰り返し再演されるようなオーケストラの新曲を生み出す公募企画で、太田市出身の作曲家、城代悠子さん=千葉市=の「IKUSA(いくさ)」が選ばれた。今回の作曲を通じてクラシック音楽の魅力を再認識したといい、15日の初演を心待ちにしている。
「ニュークラシックプロジェクト」と銘打ち、日本クラシック界をリードする指揮者の藤岡幸夫さん、山田和樹さん、原田慶太楼さん、鈴木優人さんが昨年、広く一般から公募した。44の応募作品の中から、城代さんの作品を含む4曲が、第1回受賞作に選ばれた。
城代さんは太田女子高から国立音楽大に進み、音楽教育を専攻。在学中は作曲にも取り組んだ。卒業後はクラシック楽曲の制作からは遠ざかり、会社員の傍らポップスを中心とした作曲を手がけていた。
フィンランド・タピオラ交響楽団に所属するバイオリニストで、姉のさや香さんから今回のプロジェクトを聞き、挑戦を決意。オーケストラの楽曲制作は初めてだったが、脳内でハーモニーを構成しパソコンに落とし込む作業に、昼休みや帰宅後の時間を使って取り組んだ。
作品には、人生における葛藤や自分自身との戦いを表現。ポップスを聴き慣れた若い人にもなじんでもらえるよう、打楽器を効かせたロック調としている。城代さんが敬愛する作曲家、モーリス・ラベルに通じるような和音を意識した。
IKUSAのタクトを振るのは、4月にアメリカの音楽支援財団から日本人初の最高賞を受けた原田さん。原田さんは同作と城代さんについて「幸せを運ぶハーモニーとメロディー、リズミック・エネルギーがあります。聴いている方に楽しさとワクワク感を感じさせてくれる魔法使い」と高く評価している。
15日は東京オペラシティコンサートホールで、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団と愛知室内オーケストラが合同で演奏する。