▼先の週末はかわいらしい着物や髪飾りをした七五三の子どもを街で見かけた。マスク越しからもうれしそうな表情が伝わり、心が和んだ。きょうだい一緒に七五三を迎えた5年前のわが子の姿を思い出した

 ▼子どもの成長は早く、書棚には見向きもされなくなった絵本が積まれている。8月に89歳で亡くなった高崎市出身の児童文学者、神宮輝夫さんが翻訳した『かいじゅうたちのいるところ』『まよなかのだいどころ』(モーリス・センダック作、冨山房)を久しぶりに取り出した

 ▼青山学院大で教授を務め、海外の児童文学を数多く翻訳した。作品を系統立てて分析し、論評する取り組みに力を入れて評価された

 ▼以前にインタビューした際、軍国主義がまん延していた少年時代を振り返り、「童話の平和な世界にあこがれた」と話していたことが印象に残る

 ▼終戦70年の節目に出版されたメッセージ集『私の「戦後70年談話」』(岩波書店)では、戦時中も英語の授業を受けられた旧制高崎中の教育に感謝。翻訳に夢中になった原体験を〈中学校での英語の授業にあったのかもしれない〉とつづっている

 ▼分かりやすい神宮さんの和訳を読み聞かせ、何度も子どもを眠りに誘った。珠玉の言葉は平和への強い思いに裏打ちされていた。気付けばあと20日余りで、日米開戦から80年を迎える。子どもが安心して育ち、学べる世の中が続きますように。