ドライアイス投下に使われるドローン。正確に投下するために下部にダクトを装着した(TEAD提供)
真壁調整池で繁殖するカワウ(県提供、2017年)

 アユなどを捕食して深刻な漁業被害をもたらすカワウを巡り、群馬県はドローンで樹上の巣にドライアイスを落とし、卵のふ化を抑制する新たな対策に乗り出した。木を伐採するなどの方法では、周辺に新たに営巣されて繁殖を助長してしまう恐れがあったが、絶対的な個体数を減らす効果が期待できる。県内最大のコロニー(営巣地)がある高津戸ダム(みどり市大間々町)で3月、大規模なドライアイスの投下作業に取り組んだ。

 カワウは、水辺などにコロニーを作って集団で繁殖する習性がある。県内には、2022年3月の調査で35個の巣が確認された高津戸ダムと、10個の巣があった真壁調整池(渋川市北橘町)の少なくとも2カ所にコロニーがある。

 県や地元の漁業協同組合は木を伐採したり、枝にビニールテープを巻いたりして巣を作られないように対策してきたが、コロニーの場所が池の対岸に移るだけで大きな成果に結び付かないケースもあった。

 そこで個体数そのものを減らそうと、県は20年度から、ドローン開発のTEAD(テッド、高崎市)に委託してドライアイス投下の実証実験を開始。22年6月に真壁調整池で投下作業を実施し、ドライアイスを投入した11個の巣全てで、ふ化を抑制したことを確認した。

 23年3月下旬には高津戸ダムで2日間にわたって作業し、24個の巣にドライアイスを投入することに成功。成果の検証はこれからだが、同社の担当者は「湖面にせり出した木が重なる難しい条件だったが、うまく投下できた」と自信を見せる。

 ただ、それでもカワウ対策が難しいのは、カワウが1日に40キロ程度を移動する飛行能力を持つためだ。県内で一時的に個体数が減っても、県外から飛来して回復してしまう恐れがある。

 県は空気銃によるカワウ捕獲なども行ってきたが、生息数は最多だった13年度の1154羽からは減ったものの、19年度811羽、20年度698羽、21年度800羽と下げ止まっている。県が策定したカワウ適正管理計画は、22年度に10年前の半数に当たる480羽にする目標値を設定していたが、達成は困難との見通しだ。

 ドライアイス投下は、本年度も真壁調整池と高津戸ダムで行う。県鳥獣被害対策支援センターは「近県から飛来するカワウもいて成果は見えにくいが、ドライアイス投下が有効な手段の一つであることは確か。複数の対策を組み合わせ、生息数を減らしていきたい」としている。

カワウ 体長80センチ、翼を広げた幅は130センチにもなる大型鳥類。県内では1982年に飛来が確認されてから数が増え、現在はほぼ全域に分布している。アユやマス類を1日に約500グラム食べ、2020年度の県内の漁業被害額は約6400万円に上った。ふんや鳴き声による生活環境被害も問題になっている。環境省と農林水産省は14年、カワウの個体数を23年度までに半減させる目標を掲げている。