群馬県伊勢崎市と埼玉県の本庄、深谷両市の隣接3自治体は、都市間連携事業を2024年度に開始する方針を固めた。伊勢崎市にある「田島弥平旧宅」が世界遺産登録から10年たち、深谷市出身で実業家の渋沢栄一をデザインした新しい1万円札発行といった注目度の高い出来事が重なる「メモリアルイヤー」を好機と捉え、地域振興につなげる。事業開始を内外に周知するため、伊勢崎市境島村を中心に記念行事を開く方向で調整中。今後、歴史や観光、経済交流といった事業の具体化に向けて協議を進める。

 24年は田島弥平旧宅を含む「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録(6月25日)から10年となる。他にも国道462号伊勢崎―本庄間の利根川に架かる坂東大橋の架け替え20周年(3月6日)、新幹線駅の本庄早稲田駅開業20周年(同13日)を控え、同年度上期に新1万円札の発行が予定されている。

 田島は幕末から明治にかけ、優良な蚕種(蚕の卵)を生産する技法「清涼育」を体系的に完成させ、規範となる養蚕建物を発案し、近代養蚕飼育法を確立した人物として知られる。渋沢の生誕地にある「中の家(なかんち)」主屋(明治中期建築)は屋根に天窓のある典型的な養蚕農家の形を残す。

 3市一帯はかつて養蚕をはじめとする蚕糸業が盛んで、絹産業を発展させることで日本の近代化と国際化に貢献してきた。水運が発達して利根川による恵みを受ける一方、水害との戦いを強いられてきたという共通の歴史を持っている。

 3市はこれまでも「絹」をテーマにした広域観光のほか、水道施設の相互有効活用、広域連携イベントへの相互参加などに取り組んできた。

 都市間連携の意義や互いの認識を深めるため、昨年7月に事務レベルでの協議を開始。伊勢崎市の臂泰雄市長が今年5月、吉田信解(しんげ)本庄市長、小島進深谷市長を訪ねて意見交換し、それぞれの地域資源を生かした連携事業を開始することで合意した。

 今後、継続的に取り組むことで官民の交流を深化させ、地域活性化や観光振興につなげる。イベント内容や今後の具体策について、臂市長は「予算編成に関わるので、12月までには方向性を決めたい」としている。