実験用プラントを紹介する岡田製作所の桃井遼さん=明和町

 堆肥化プラント製造の岡田製作所(群馬県館林市近藤町、鈴木郁男社長)と同市、地元農家、東洋大生命科学部(板倉町泉野)が、野菜くずを農業に再利用する取り組みを進めている。廃棄物をメタン発酵させ、メタンガスと液体肥料(液肥)になる消化液を生成するプラントを4者で運営。エネルギーや肥料の価格が高騰する中、資源循環システムの構築を目指す。

 プラントはコスト回収の点から大型が一般的だが、農家が気軽に活用できるよう同社が小型の製品を開発した。市の助成を受け、市内の農家が所有する明和町の敷地内に実証実験用のプラントを設置し、3月に稼働を始めた。

 農家が栽培過程で出る野菜くずを発酵タンクに投入。野菜くずのほか、食品の残りかすやし尿、ふん尿でも生成できるという。約30日かかるメタン発酵で、廃棄物に含まれる有機物を微生物が分解し、天然ガスの原料であるメタンガスを発生させる。残った消化液は植物の成長に有効な窒素やリンなどを含み、液肥として畑に還元される。

 発生したメタンガスの濃度は約60%と低く、装置で燃やして排出する。将来的には都市ガスと同水準の90%程度に高め、ガスエンジンを搭載した耕運機など農業機械や発電機の動力源として供給を目指す。

 このプロジェクトに参加する農家の大野恵介さん(36)は「持続可能な農業を目指している。エネルギー循環の素晴らしい取り組み」と評価。ロシアのウクライナ侵攻などで肥料価格は2倍に上がった。「情勢が読めない中、地域内で完結できるなら安心材料になる」と期待する。

 東洋大生命科学部の清水和哉教授が投入物による微生物の変化やメタンガスの精度についてモニタリングし、結果を装置の改良に生かす。本格稼働すれば、野菜くずを1日18リットル投入でき、投入量72リットルに対して180リットル以上のメタンガスと、投入量と同量程度の液肥を生成できるという。

 鈴木社長(56)は「災害時には緊急用の電源になる。生ごみでも生成できるので市のごみ処理費削減にもつながる。プロジェクトを知って農業や工業を面白いと思ってくれる人が増えたらうれしい」と語る。

 同プロジェクトで一緒に取り組む高校や高校生を募集している。問い合わせは同社(☎0276-74-3838)へ。