▼図書館で資料を借りるとき、風景写真集や紀行文を1冊まぜ息抜きにページをめくる。先日手にしたのは世界の絶景地を歩いて旅するための案内書。雄大な山々と輝く森、青い湖が織りなすカナディアンロッキーの見開きに前の利用者の貸出票が挟まっていた

 ▼返却期限は今年1月半ば。海外旅行のガイド本も一緒に借りたようだ。コロナ後を思いページをめくったのだろうか。旅先で偶然同郷の人と会い、言葉を交わしたような不思議な気持ちになった

 ▼〈ふらんすへ行きたしと思へども/ふらんすはあまりに遠し〉。前橋の詩人、萩原朔太郎は100年近く前の作品『旅上』の冒頭に書いた。海外は今もはるか遠く、県境をまたぐのさえはばかられる

 ▼例年6月に多い県内小中学校の修学旅行は秋への延期を決める自治体が増えている。旅行や帰省といった夏休みの予定も立たない。疲弊する観光業界はもちろん、旅を我慢するのも限界に近い

 ▼秋には状況が好転するだろうか。菅義偉首相が9日の党首討論で10~11月には希望する国民へのワクチン接種を終えると表明した。度重なる緊急事態宣言の延長を見ると手放しに信じられないが、今度こそ期限内に目標を達成してほしい

 ▼本県のまん延防止等重点措置はあすで終わる。とはいえワクチンを接種するまで自由な移動は難しい。もう少し本の力を借りて旅心を刺激しながら秋を待ちたい。