▼学生運動が盛んだった頃、ジャズ喫茶はカウンターカルチャーのシンボル的な存在だった。作家の村上春樹さんはデビュー前、「ピーターキャット」というジャズバーを経営していたことで知られる

 ▼数々のジャズ・ミュージシャンの伝記を翻訳し、イラストレーターの和田誠さんと組んだエッセー集もある。音楽全般に詳しく、文学論をめぐる対談でも〈優れたパーカッショニストは、一番大事な音を叩(たた)かない〉なんて言葉がすらりと口を突く

 ▼本県を代表するジャズ奏者と言えば桐生市出身のピアニスト、山中千尋さんだ。今年はデビュー20周年。前橋でのコンサートには大勢のファンが集まった

 ▼父はフルート、母はピアノを演奏する音楽一家に生まれた。桐朋学園大ピアノ科を卒業し、米国のバークリー音楽院に留学。ジャズの国際コンクール優勝をきっかけに注目され、世界の名門クラブで演奏してきた

 ▼コロナ禍で昨年開くはずだった演奏会は延期の末、中止に。今回も急きょ会場を大ホールに変え、対策を強化しての開催となった。山中さんは「節目の年に故郷の群馬で演奏できることを本当にうれしく思っている」と話し、最後は「八木節」で感謝の気持ちを伝えた

 ▼古書店巡りが趣味という読書家で、上毛新聞では「ニコニコ世迷(よま)い言(ごと)」という連載を執筆している。原稿が届くのはいつも掲載ぎりぎり。文章へのこだわりも超一流だ。