曽祖父の坂睦明さんに抱かれて舞台を興味深そうに見つめる笠間祐樹ちゃん

 クラシック演奏会に行きにくいと感じる人に生の音楽を聴いてもらおうと、群馬交響楽団は26日、高崎市の高崎芸術劇場で「ふらっとコンサート」を開いた。演奏中に声が出ても構わない、楽団初の試み。聴衆は泣き声や手をたたく音などを気にすることなく、豊かな響きを楽しんだ。

 「赤ちゃんや障害のある人ら誰もが共に楽しむインクルーシブなコンサート」として、配布プログラムで公演中の声や離席に理解を求めるとともに、車いすでの鑑賞スペースやベビーカー置き場などを設けた。午前中の開演も楽団初で、高齢者施設利用者の団体が昼食前のレクリエーションとして来場する姿もあった。

 会場には乳児を連れた家族らが多く姿を見せた。演奏会はビゼーの歌劇「カルメン」前奏曲で幕開け。子どもたちは、威勢よく響くシンバルに思わず耳をふさいだり、指揮者のまねをして腕を大きく振ったり、元気に泣いたりと全身で演奏を受け止めた。

 28日に1歳になる笠間祐樹ちゃん(玉村町)は母の菜奈絵さん(34)、曽祖父の坂睦明さん(90)に抱かれ、コンサートホールに“デビュー”。初のオーケストラサウンドに、手足を動かして反応した。菜奈絵さんは「本物の音にじかに触れることができた。これから元気に育ち、音楽に興味を持ってくれたらうれしい」と話した。

 タクトを振った楽団常任指揮者の飯森範親さんは「世代を超え音楽を楽しむ空間をつくることができ、門戸を広げられた」と話し、来年度以降の開催継続に意欲を示した。