▼その昔、現在のトルコにあったというフリギアの王となったゴルディオスは、神への感謝として自らの牛車をささげ神殿に結び付けた。そして「これを解いた者はアジアを支配するだろう」と予言したが、結び目は複雑で成功する者は現れなかった

 ▼「ゴルディオスの結び目」とは誰も解決することができないような難題の例えだ。日本のトップも複雑に絡んでこじれた権力の結び目を解くことができなかったか

 ▼菅義偉首相が自民党総裁選への不出馬を表明した。首相も辞任する見通しだ。支持率が低迷する中、総裁選前の党役員刷新や内閣改造、衆院解散といった奇策を講じようとした。それが危機に陥った政権を延命する個利個略と見透かされた

 ▼言うまでもなく本当の危機は新型コロナである。権力闘争をしている余裕はなく、党内でも県選出の国会議員ら有志が派閥にとらわれない総裁選を求めて声を上げている。コロナと闘うリーダーを派閥の力学でなく議員個人の責任で選び、理由を県民に説明すべきだろう

 ▼ゴルディオスの伝説には続きがある。後にマケドニアのアレクサンドロス大王は結び目を解くのでなく、剣で断ち切り、大帝国を築いた。転じて、発想を転換し思い切った手段で問題を解決するとの意味もある

 ▼旧態依然とした派閥の論理を一刀両断し、危機に立ち向かう新たな王を選ぶことができるか。民は注視している。