▼藤岡市の市街地へと向かう途中、信号機の隣に「本動堂」という地名標識を見つけた。読むことができず、調べてみると本県を代表する難読地名の一つ、「もとゆるぎどう」と分かった

 ▼言い伝えによると、鎌倉時代に旅の僧がお堂に観音像をまつった。村人が雨乞いをしたところ、お堂を揺るがすほどの大雨が降ったので「動堂」に。後に藤岡城主が移設したため、元の場所が「本動堂」になった。「元揺堂」としてくれたらいいのに、日本語は難しい

 ▼職業柄、県内の地理や歴史には詳しいはずだが、伊勢崎市境の「百々(どうどう)」や安中市松井田町の「行田(おくなだ)」などは簡単に読めない。これも難問だろう。神流町の「魚尾」である

 ▼村人が川の中にある「丸岩」という大きな岩で神様が休んでいるのを見つけ、焼いた魚を差し上げたところ、尾びれまで食べてしまったという伝説に由来した地名という。読み方は「よのお」である

 ▼興味が湧いたので、難読地名「魚尾」を訪ねるドライブに出掛けた。下久保ダムを越えて神流川沿いを進むと、奥多野の山々が迫ってくる。丸岩は旧中里村に入って間もなくの場所にあった

 ▼その形からカエル岩とも呼ばれる。近くにはヘビ岩、ナメクジ岩があり、「三すくみ岩」の伝説が残る。なるほど巨岩をじっくり眺めているとヘビやナメクジに見えてくる。夏の終わりに思いがけず、郷土の魅力を再発見する旅になった。