誰も経験したことのない新型コロナウイルス感染症の流行は、私たちの暮らしに大きな不安と混乱を招きました。感染対策として取られた突然の一斉休校や度重なる緊急事態宣言による自粛生活は、子どもと家庭に大きな影響を及ぼしています。

 学習機会の喪失、それを補う学校再開後の詰め込み教育は、子どもたちにとって大きな負担となっているのではないでしょうか。GIGAスクール構想の促進による慣れないデジタル活用も追い打ちを掛け、学校や教員にも混乱や負担が生じているのではないかと推察されます。

 以前から経済的困難からくる学力格差が心配されていましたが、コロナ禍でより一層経済的格差や学力格差が広がり、困難さが増しています。ステイホームで行き場のないストレスが家庭内に集中し、息の詰まる閉塞(へいそく)状態に陥った家族も多いのではないかと思われます。また、外部との交流が途絶えて親子の孤立が懸念されます。地域ではワクワクドキドキと心を躍らせるお祭りやイベントが中止となり、子どもたちにとって楽しみな遊びやスポーツ・文化活動の機会も失いました。

 大人はこれらの対策について「命を守るために今は仕方がない」と説明してきましたが、日々成長発達している子どもたちにとって情緒的、身体的に及ぼす影響はとても大きいと思われます。

 遊びは子どもの成長発達のエネルギー源です。遊びや運動が不足し会話の少ない生活が続くと、気力も活力も低下してやる気もうせてしまいます。体力や免疫力も弱くなって心身の健康を損なう状況にもなりかねません。実際、コロナ不安で長期欠席する児童生徒の増加や、散歩で細く不安定なあぜ道を歩けないなど、体力やバランス機能の低下が見られるとの報告もあります。

 子どもたちが幸せに暮らし、豊かに育っていく「子ども時代」を過ごせるように、とつくられた世界の約束(国際条約)に「国連子どもの権利条約」があります。この条約に照らして、国連から日本の教育制度に対し、競争的でストレスフルな学校環境から子どもたちを解放することや、遊び・休息の重要性を認識して時間を確保することが勧告されています。子どもを守る観点から、これらをベースに子どもたちを取り巻く環境をいかにつくり上げるかが今後の大きな課題でしょう。

 子どもは人と関わって遊び、その中で人間関係を育み、社会性を培い、さまざまな体験を通して多くのことを学び、成長していきます。まずは、感染を防ぐための禁止事項を増やすのではなく、このような状況下でも子どもたちの成長のために知恵を絞ってできることを増やしていく思考の転換が必要ではないかと考えます。

 【略歴】玉村町を中心に35年間、小中学校教員を務めた。2020年、同町を拠点に子ども支援団体「JOYクラブ」を設立。群馬子どもの権利委員会副代表。群馬大卒。

2021/11/25掲載