▼子どもの頃に欲しかったものといえば、人気漫画に出てくる秘密道具のあれこれ。『ドラえもん』のどこでもドアや『パーマン』のコピーロボットに憧れた。どこへでも自由に行けたら。もう一人、自分がいたら。そんな空想をするのが好きだった

 ▼病気やけがで思うように外へ出られない人たちにとっては切実な願いに違いない。障害のある人が自宅などから操作する分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」が県庁内のカフェで働き始めたと知り、出掛けた

 ▼「こんにちは。いらっしゃいませ」。カウンターに置かれたロボットを通して接客してくれたのは「にまさん」と名乗る女性。難病の多発性硬化症で、都内からパソコンを使って動かしているという

 ▼カメラとマイク、スピーカーが付いているから客の様子が分かり、会話もできる。にまさんがロボットの小さな手を動かすと、こちらも思わず手を振り返してしまう。やりとりを楽しんでいるうちにお客さんが後ろに並び、慌てて注文を済ませた▼分身ロボットは、デジタル技術を使って障害のある人たちの社会参加を進めようと県が導入した。3月までの予定で、数人が金曜の昼に交代で働く

 ▼自由に出掛けられなくても、分身がどこでもいろいろな場所へ行き、自分らしく働いたり、活動したりできる。障害のある人と社会をつなぐ手段の一つとして、活用の場が広がるといい。