デジタルアーカイブ化された湯本家住宅(上)と旧太子駅(ユーチューブより)
デジタルアーカイブ化された湯本家住宅(上)と旧太子駅(ユーチューブより)

 群馬県中之条町と町観光協会は、宇都宮大と連携して同町六合地区にある産業遺産「湯本家住宅」と「旧太子(おおし)駅」をデジタルアーカイブ化した。3Dレーザースキャン技術で歴史的建造物のデータを立体的に記録保存し、動画などにして観光プロモーションに活用するほか、将来の修復事業に役立てる。

 全国で歴史的建造物の維持管理に対する費用面の負担や、修復の技術者の減少が課題となっている。同町では、失われる前に建物のデータを詳細に記録しようと、産官学連携プロジェクトが始動。まちづくりを研究する同大地域デザイン科学部講師の鈴木富之さんが、測量などを手がける大同情報技術(東京)の技術協力で取り組んだ。

 両者はレーザースキャナーで3月に湯本家、5月に旧太子駅をそれぞれ計測。建物や地形を点の集合体として表現する「3次元点群データ」を取り、着色して立体的な画像にした。

 画像をパソコンで見ると、マウスを操作して空間内を自由に移動し、視点を変えるといった臨場感を味わえる。立体的に表示するだけでなく、データからは構造物の位置関係や寸法などが詳細に把握できる。鈴木さんは「測量や設計に幅広く使われている技術のため、後に建物を修復する際に活用できる」と説明する。

 湯本家住宅は築200年以上の木造3階建て土蔵造りの建物で、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定された六合赤岩地区にある。獄中から逃亡した江戸時代の蘭学者、高野長英が隠れ住んだといわれる「長英の間」と称する部屋がある。

 旧太子駅は鉄鉱石を運ぶ専用線「太子線」の始発駅として戦時中に開業。太子線は1971年に廃線となった。町が駅舎やホームを復元したほか、鉄鉱石を積むための「ホッパー棟」の遺構は2021年に国登録有形文化財となった。

 いずれも古い建物は中に立ち入れず、原則として外観見学のみとなっている。今回取得したデータを活用すれば、仮想現実(VR)の空間で内部を見学することも可能になる。

 同協会は「立ち入りのできない所に入った気分になれるし、往事の姿を実物に近い形で残せる。観光コンテンツとして生かしたい」としている。

 湯本家住宅と旧太子駅の3D画像は、紹介文やナレーションを入れて各3分間の動画に編集。動画投稿サイト「ユーチューブ」の町観光協会チャンネルで公開している。