▼庭にフクジュソウの花が一つ顔を出した。数年前にいただいた。花を見つけてから、「そういえば、植え替えたな」と思い出すほどで、これといった手入れをしていないが、鮮やかな黄色を見せてくれる

 ▼安中市松井田町上増田の「木馬瀬(ちませ)の福寿草自生地」を訪ねた。ここには幕末の勘定奉行、小栗上野介が領地である現在の高崎市倉渕町権田に退く際、幕府再興のための軍用金を埋めていったとの言い伝えがある
 
 ▼多くの小判が日の目を見ないことを嘆き、黄金色のフクジュソウとなって地上に出てきたとする。駆け出しのころ、そんな伝説について旧倉渕村で聞くと、小栗を顕彰する地元の人に一喝された

 ▼薩長中心の官軍から小栗は「賊軍」とされ、いわれなき罪で斬首された。伝説は明治以降の「薩長史観」を補強するもの。横須賀造船所建設など近代化に果たした役割を正当に評価すべきだ-とする指摘だった
 
 ▼「歴史は勝者によって書かれ、伝えられる」「権力者にとって都合の悪い出来事は隠される」という歴史の見方を伝えたかったのだろう。加えて「正しいとの思い込みはいけない」「一つの道だけが正解ではない」という教えだと当時受け止めた

 ▼年を重ねた今、固定観念に縛られていないだろうか。時折、伝説を思い出し、頭の手入れをしようと思う。庭も忘れずに気にかけたい。