▼上毛文学賞小説部門の最高賞に輝いた美才治幸子さんの『あちゃ がら もうぞう べえ がんす』は主人公の上州弁が懐かしく、4月15日の掲載から1カ月がたった今も反響が絶えない

 ▼タイトルは吾妻地域の方言。「あちゃ」はそれでは、「がら」はついつい、「もうぞう」は急にの意味。「べえ」と「がんす」は相手に向かって語りかける文末表現。主人公に自らの両親や祖父母の姿を重ねた読者が多かったようだ

 ▼実業家・渋沢栄一を主人公にしたNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」の魅力も方言だろう。「だんべえ」言葉が、血洗島村(埼玉県深谷市)と上州の強い結びつきを感じさせる

 ▼第12話では「(とっさまは)まっこと男の中の男。百姓の中の百姓だに」とのせりふがあった。方言を監修する群馬県立女子大教授の新井小枝子さんによると、文末の「に」は太田市尾島町でも使われ、「行ぐに」「嫌だに」などと用いる

 ▼「どどめ」は全国各地にさまざまな呼び方があるためあえて使わず、みんなに分かるよう「桑の実」に。父母を指す「とっさま」「かっさま」はテンポ良く進めるため、ドラマの中だけの言葉だという

 ▼新井さんは「武州と上州の境を流れる利根川は人と人とを隔てる川ではなく、人の動きをつなぐ役割を担った」と話す。ドラマは血洗島編が終わり、舞台は京都に。これからも言葉に注目しながら栄一を見守りたい。