▼陸上競技の日本記録が生まれた瞬間を初めて生で見たのは1994年だった。女子棒高跳びで従来の記録を1センチ上回る3メートル21。日本選手権で正式採用されたのが95年だから、まだ女子による競技の歴史が浅いころのことだ

 ▼バーを越えた時の鳥肌が立つような興奮を覚えているのだが、今の日本記録は4メートル40まで伸びている。30年もたたない間に高まった女性の競技力に驚かされる

 ▼女子棒高跳びは2000年シドニーから五輪種目になった。他競技でも「ジェンダー平等」が進み、12年ロンドンでボクシングに女子種目が加わったことで、全競技で女性の参加が可能になった

 ▼「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長による3日の発言が尾を引いている。ジェンダー平等は東京大会の基本的原則の一つだ。森会長は4日に撤回して謝罪したが、国内外からの批判は収まらない

 ▼組織委の女性について「みんなわきまえておられて」と述べたことも、優位な立場から異論を許さない圧力として問題視されている」

 ▼陸上男子400メートル障害で日本記録を持つ為末大さんはいかなる性差別にも反対し、森会長の処遇の検討を求めるとする意見を表明している。「沈黙は賛同である」との指摘を受けてのことだという。一人一人が考えたい。