▼この国難のときこそ力を発揮してほしい人だった。元上野村長、黒沢丈夫さんが2011年12月に97歳で亡くなった直後、本コラムにこう書いた

 ▼同年3月の東日本大震災で日本はかつてない危機に直面していた。そんな事態に、先駆的な山村振興策、日航機墜落事故での適切な対応などの実績で知られる黒沢さんの知見が大きな示唆を与えてくれるのではないか

 ▼そう期待し村を訪れたが、体調を崩されていて聞くことができなかった。新型コロナウイルス感染が拡大する今、その思いは一層強くなっている。黒沢さんの何がそうさせるのだろう

 ▼作家で政治史研究家、瀧澤中たきざわ あたるさんは、『人望力』(致知出版社)で、人々を動かすのは (1)知識・知恵 (2)決断・実行 (3)利他心・慈愛―の要素からなる「人望」だとした。このなかで最も大切なのは(3)であり、〈他の人に役立つ仕事をやりとげられる人こそ、偉大な指導者〉だという

 ▼実例として冒頭で取り上げたのが黒沢さんだ。私心を抑制し、常に自分以外の利益を図る姿勢が、慕われ、人望を得たととらえる。さらには福田赳夫元首相、二宮尊徳、西郷隆盛や、幕末の知られざる幕臣らを紹介している

 ▼政治、経済をはじめ、あらゆる分野のリーダーに、これまでにも増して 強く求められている資質だ。それを備えた人物がどれほどいるだろう。