▼収穫期を過ぎた花豆の畑は雪に覆われ、一面の銀世界だった。ザクザクと踏み入ったものの、長靴を履いた足を取られ思わずよろける。それでも標高約1000メートルの場所で20センチほどの積雪は少ない方だという
▼大粒でふっくらした形が特徴の花豆。標高の高い地域で栽培が盛んだが、年々収穫量が減っていると聞き、嬬恋村の生産者を訪ねた。千嶋澄孝さん(55)は「20年くらい作っていて、これほど不作の年はなかった」と昨年を振り返る
▼温暖化など気候の変化を肌で感じており、「ここでぎりぎり。もう少し高い場所でないと無理かもしれない」と話す。さらに悔しいのが、割れたり、皮にしわが寄ったりして出荷できない豆が増えていることだ
▼昨年は規格外が収穫の3分の1を占めた。雪解けを待って始める畑の準備から収穫後の選別まで、ほとんどが手作業。「手間は同じなのにね」。千嶋さんの言葉が重く響いた
▼規格外の農産物は廃棄されがちで、店頭に並んでも「きずもの」扱い。生産者の思いに触れると「安く買えて得した」と感じていた自分が恥ずかしくなる
▼千嶋さんの規格外の花豆は、仲間がようかんに加工して売り出した。慈善ではなく収入につなげる取り組みだが、広がりに期待したい。うまい食べ物を口にできるのは生産者がいてこそ。感謝の気持ちを消費行動に移したい。