▼1979年創刊のガイドブック『地球の歩き方』は大きなリュックを背負って旅行する若者たちのバイブルだった。20歳の頃、外国を旅した。この本に青春の一ページを重ねる人は多いだろう

 ▼コロナ禍で海外旅行どころではなくなり、『地球の歩き方』の出版事業は今年から別会社に移った。こんな時だからこそ、「地球1周を達成した」と聞いた時は留飲が下がった

 ▼連絡をくれたのは高崎市の言語学者、須藤やすしさん(89)。糖尿病と診断されたのをきっかけにジョギングを始め、雨の日も風の日も毎日5キロを走ること22年。走破した距離がおよそ地球1周分の4万キロに達した。日々の健康づくりをグローバルに捉える発想は学者らしい

 ▼須藤さんには健康にまつわる著書があり、ラジオ体操や腹式呼吸の効能を説く。卒寿が近づく今はソーシャルディスタンスを意識しながら屋外を歩いているという

 ▼『地球の歩き方』は近年、桐生市が連携して観光パンフレットを作ったり、東京版がヒットしたり新たな展開に注目が集まった。旅行需要がどこまで回復するかは、これから始まるワクチン接種が鍵を握る

 ▼旅から戻った時、「言葉が通じるとこんなに楽なのか」と実感したことを思い出した。外出自粛で移動は制限されても、発想は無限に広げられることを須藤さんに教えられた気がした。