▼零式艦上戦闘機(零戦)の設計者で、ジブリ映画「風立ちぬ」の主人公のモデルとして知られる堀越二郎(1903~82年)の命日が11日と知り、生地の藤岡市を訪ねた
▼和算の関孝和、世界遺産の高山社を創設した高山長五郎とともに「藤岡三偉人」とされ、のぼりが立つ。中心街にあり、観光案内所の機能を持つ会遊亭の亭主、田口宣雄さんは知名度不足を指摘する
▼会遊亭は「町を元気にする拠点」でもあり、田口さんは「もっと町おこしに生かせないか」と思案する。有志が河川敷に整備したラジコン用の飛行場でイベントを開き、全国からマニアが集まることを夢見る
▼藤岡歴史館に堀越の資料が展示されている。生家の改築で散逸の恐れもあったが、親族らから寄贈された。開発が進んでいた戦闘機「烈風」の図面、学会誌などの技術資料もある
▼ただ、戦争や特攻の記憶と切り離すことはできない。同館担当者は「大戦の象徴とされる点はあった」と指摘しながら、その上で〈日本の航空機技術を世界水準まで高めた〉(2013年企画展図録)点から捉え直しができないかとする
▼零戦の高い操縦性など今につながる技術は数多いという。堀越の口癖は「機能的に優れたものは美しい」。設計した戦闘機の一つを見ると納得する。そんな設計思想とともに、もっと知られてもいい。