▼〈人生は死ぬまで現役である、老後の存在する隙はない〉。作家、宇野千代さん(1897~1996年)の言葉だ。さらにこうも言い切る。〈死ぬまでに、あと何日しかない、と分かっていても、その何日かの間、たのしいと思うことが、私には必要である〉

 ▼新型コロナウイルス感染が広がるばかりで心がふさぎがちな年末年始、宇野さんの『行動することが生きることである』(集英社文庫)を読んで、みなぎる生命力に強く背中を押された気がした

 ▼自由奔放に生き、数々の優れた作品を残した作家が、困難を乗り越え達した境地なのだろう。前向きに積極的に生きるすべは、今も多くの人を励ましてくれるに違いない

 ▼萩原朔太郎の長女で作家の萩原葉子さん(1920~2005年)はその刺激を受けた一人。宇野さんを生きる目標だとし、こう書いている。〈もうだめと思う時は大先輩の人生訓を見習い、勇気を湧かせている〉

 ▼前橋文学館で開かれている葉子さんの生誕100年記念展は、37歳で始めた執筆活動とともに、40代半ばから晩年まで打ち込んだダンス、オブジェなどの造形作品に光を当てている

 ▼「出発に年齢はない」をモットーに、「書いて、創って、踊る」ことを実践し続けた生涯。苦労の末の遅咲きだからこそ、見る者を一層強く鼓舞してくれる、そんな作品群だ。