▼正月休みにおいっ子に会えず、お年玉を渡せていない。時流のキャッシュレスで贈ろうとも考えたが、どうも味気ない。デジタル化の波を前におどおどしている

 ▼今年の経済をけん引するのは菅政権肝いりのデジタルだろうか。年明け最初の取引となる東京証券取引所の大発会がきのうあった

 ▼うし年の相場格言は「つまずき」だ。「繁栄」の年だった昨年は新型コロナウイルスの影響で春先に株価が急落したが、一転してバブル期以来31年ぶりの高値となった。格言は的を外していないように見えるが、さて今年はどうだろう

 ▼株高は黒田東彦総裁率いる日銀の金融政策によるところが大きく、実体経済を反映しているとは言い難い。日銀前橋支店が先月発表した調査結果を見ても、企業環境の厳しさが表れている

 ▼高崎市出身で日銀総裁を務めた深井英五(1871~1945年)は自著『回顧七十年』で産業と中央銀行の関係について〈其の疏通を便にする為めに工夫を凝らし、必要の資金を放出すべきである〉と記し、その結果として〈生産力の伸張に伴い、通貨の発行高も増加して両者の間に均衡を保つ〉とした

 ▼今年は深井生誕から150年。県内にはデジタルばかりでなく、有望産業が豊富だ。遺訓も参考に、企業がつまずいても起き上がれるよう天下にお金が回る施策を願いたい。