▼新しい取り組み、とりわけ文化に関わる活動は、成果が見えるまで長い時間と手間が必要だ

 ▼企業メセナ群馬専務理事の竹内嘉一かいちさんは、そうした活動の難しさを説いたうえで、企業、行政にとって芸術家への支援活動が不可欠な理由をこう述べた。「アートは心に潤いを与え、社会を元気にし、人々の輪をつくる」ものだからと

 ▼2013年、県文化基本条例の制定を記念して前橋で開かれたシンポジウムの事例発表だ。先月末、竹内さんが84歳で亡くなったと知り、実践者ならではの力強いこの言葉を思い出した

 ▼大学を出て電機メーカーの営業マンとして全国各地の支店で働いたが、30代後半にストレス性の十二指腸潰瘍になり退社。故郷の前橋で現代版画専門のギャラリーを開設した。大きな転身である

 ▼業績を伸ばすなか、独自の取り組みを始める。市内の小中学校への版画の寄贈だ。「最も情操教育を必要とする時期の子供たちに本物の美術品に触れてほしい」と知り合いの版画家の協力で続け、数年で100点を超えた。さらに高校、大学にも広げた

 ▼30年前に企業メセナ群馬が発足すると、その運営の中軸となり、企業による芸術文化支援に力を尽くした。アートを地域づくりに生かす企画も次々と手掛けた。地道な活動の蓄積は、さまざまな場でゆっくりと芽を吹いている。