▼若者の渇望が社会を突き動かす力になることがある。先月亡くなった元JR東日本社長の松田昌士さんは国鉄分割・民営化の要因について「(国鉄内の)若い人が人生をどうするのか考えだした。今のままでは夢が持てない状況だった」と振り返っている

 ▼長野冬季五輪直後の高崎で、当時の小寺弘之知事と対談したときのこと。「改革3人組」の1人とされ、中曽根康弘元首相が「戦後政治の総決算」として心血を注いだ改革を国鉄内部から進めた

 ▼元首相は101歳で生涯を閉じるまで、若者の登用に力を入れた。目玉政策の実現に尽力した松田さんの言葉を知り、あらためて若者に縁のある政治家だったと感じた

 ▼終戦後、元首相が若者を集め、政治理念や思想運動の拠点とした高崎の青雲塾が今月末、公益財団法人としての役割を終えることになった。昨年11月に元首相が亡くなったことを踏まえたものだ

 ▼中曽根康弘世界平和研究所(東京)が受け継ぎ、会館や資料館を運営するが、若者を対象にした独自の論文募集は打ち切る方針だ。かつての塾生は全国約4万人に上るという。高崎で育まれた戦後政治の足跡が消えてしまうようで寂しい

 ▼会館に入ると、若き元首相が同志から贈られた寄せ書きが目に映る。青雲の志を育んだ場所として語り継ぎ、施設がこの地にあり続けることを願う。