群馬県神流町がブランド化を進める町産材の「神流杉」と「神流檜(ひのき)」の認知度を高め、建築材に活用してもらおうと、町と神流川森林組合、住宅産業研修財団など5者は27日、連携・協力のための協定を結んだ。これまで町が協力してきた若手大工の育成事業を通じて町産材の魅力をPRし、全国への販路拡大につなげる。

 協定は脱炭素社会の実現に向けた木材の利用促進に関する法律に基づき、町によると自治体が事業者と協定を結ぶのは県内で初めて。

 2018年に始まった木造建築の伝統工法を担う若手大工の育成事業「大工志塾」(同財団主催)に対し、町は実技研修の場所と町産材を提供するなど協力してきた。今回は同事業を運営する全国工務店ネットワーク「優良工務店の会」、同塾とその前身団体の修了生でつくる「大工志の会」も協定を結んだ。

 優良工務店の会は約50社が加盟する。同塾の修了生56人は東京や愛知、大阪、福岡など各地の工務店で活躍し、現在は塾生65人が町内外で研修している。前身団体を含めると約650人の修了生が全国に散らばっており、こうしたつながりを生かして町産材の利用拡大を進めたい考えだ。

 町は総面積の9割を山林が占める。標高650メートル以上で育った木を加工した木材は密度が高く、虫が付きにくいといった特長があり、耐久性の高い建物造りができるという。

 これまでほとんど使われなかった町有林の活用に森林組合などが乗り出し、主に間伐した樹齢50~60年の木材を出荷している。近年は年間の町産材出荷量が約1万立方メートルに増えたが、工務店への出荷は数%にとどまる。町産材の良さを知った同塾の指導者による発注が増えており、協定の締結で出荷増を目指す。

 町産材の認知度を高めるため、同組合は現在、「神流杉」と「神流檜」の商標登録を申請している。豊富な森林資源を循環させることで脱炭素化の目標実現や持続可能な開発目標(SDGs)への貢献も取り組む。

 同日に町役場で締結式が開かれ、田村利男町長は「全国に神流町の木材の良さを発信して大勢に利用してほしい。今後はサービスや宣伝方法を考えていく」と述べた。