▼〈安西先生…。バスケがしたいです…〉。高校バスケットボールを描いた井上雄彦さんの漫画『スラムダンク』の名場面だ。1990年から96年まで週刊少年ジャンプに連載され、読者をとりこにした

 ▼冒頭は中学時代にMVPの活躍をした選手の言葉。高校入学後にけがで挫折し、競技を離れて不良グループとつるんだ。かつての仲間や後輩をつぶそうと、体育館に乗り込み、大乱闘の後に発した

 ▼競技の名前を変えれば、今、多くの高校生が同じ思いではないだろうか。「陸上がしたいです」「サッカーがしたいです」「柔道がしたいです」-。全国高校体育連盟が26日、8月の全国高校総合体育大会(インターハイ)の中止を決めた

 ▼新型コロナウイルスの感染拡大を受けて判断した。先週は全国中学校体育大会の中止も明らかになった。命が大切なことは理解できても、集大成の場を失った選手の気持ちを考えるとやるせない

 ▼冒頭の選手は強豪とはいえない高校に入学して「全国制覇」を掲げ、周囲もそれを信じた。大乱闘の後に復帰し、欠かせない存在となった

 ▼中学MVPをつかみ、進学先を決めたのは安西先生の言葉があったから。「あきらめたらそこで試合終了だよ」。これまでの取り組みは財産だ。競技を続けるにせよ、離れるにせよ人生という「試合」は続く。あきらめないで。