▼旧群馬町出身の歌人、土屋文明の指導は厳しかった。後に門人となった故・清水房雄さんは19歳で初めて批評を仰いだ。順番が来るとたった一言。「平凡だね。はい、次ッ」。この言葉はずっと頭を離れなかった
▼文明には数々のエピソードが伝わる。作歌の上達法を尋ねた人を「俺が知りてえ」と怒鳴り飛ばした。初対面の学生を「下手だね。君は」と一刀両断した。真剣に歌人を目指す人には容赦なかった
▼一方で温かな一面も伝わる。
▼ことしは生誕130周年。斎藤茂吉に比べると愛唱性のある歌が少ないのが残念だが、妻への
▼厳しい指導は多くの後進を育てた。冒頭に挙げた清水さんもその一人。叱咤を「もっと自分で考えろということなのだ」と捉えて精進し、歌壇を代表する一人となった
▼年をとると、真剣に叱ってくれる人のありがたさに気づく。新社会人の皆さんは、新たな環境に戸惑いを感じていることだろう。失敗を恐れず、上司や先輩の叱咤を前向きに捉えて奮起する人になってほしい。