▼コンパクトな空間に、遺産に関わった多くの人たちの思いが凝縮されている-。世界文化遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の情報発信施設・県立世界遺産センター「『世界を変える生糸いとの力』研究所」(富岡市)の印象だ

 ▼4資産で構成する世界遺産の全体像を把握できるようにすることを目指す待望の施設である。27日に予定されていた開館は新型コロナウイルス感染拡大を受け延期されたが、内覧会で一足早く見学させてもらった

 ▼築120年近いれんが造り2階建て倉庫を改修した、存在感のある建物だ。しかしセンターとして十分な広さとは思えない。遺産の価値を正確に伝えるには、さまざまな角度からの解説が必要なため、情報を詰め込み過ぎて、入館者に拒否反応を示されないかと心配された

 ▼館内を巡って、ほっとした。メリハリをつけた紹介、親しみやすい解説の工夫も多く、シアターの大スクリーンで見られる往時の姿の再現映像も迫力がある

 ▼課題は、情報発信、普及啓発とともに大きな役割とされる調査研究機能だ。専門家から学術研究の不足が指摘されており、それを担う拠点整備が期待される

 ▼登録以後、資産ごとに地道な研究が積み重ねられてきた。これらの成果を一堂に集め、絹に関わる世界の碩学せきがくが交流し、研究を深めていく、そんな施設へと育ってほしい。