「男のDVD333円~」のキャッチフレーズでおなじみの利根書店。25年前に1人の青年が始めた古書・DVD買い取り販売店は、世の男性たちの心をつかみ、北関東を中心に30店舗を展開するまでになった。運営するプリマベーラ(群馬県太田市西本町)は、2023年6月期決算で14期連続の増収増益を達成。動画配信サービスが普及し、DVD市場が縮小する中で躍進を続ける秘訣は何か。創業者の吉川充秀会長(50)に聞いた。

―DVD市場が縮小する中で、利根書店は健闘している。
インターネットの台頭により、2005年で市場規模が頭打ちになると言われていて、映画DVDなどは急速に縮小していった。ところが、アダルトは減り方が非常になだらかだった。
―映画とアダルトの運命を分けたのは。
ネットでアダルト動画を見ようとすると、20年くらい前は詐欺サイトばかりだった。パソコンがブラックアウトしたり、架空請求が来たり。それで「二度とネットでは見ない」という人が増えた。詐欺サイトがあったために、成人向けDVDは守られた部分がある。現在は特に50~60代の男性から根強いニーズがある。
―底堅い需要がある。
この世から無くならない業界が二つある。一つが男性にとっての「エロ」。そして女性にとっての「美」。美しさとエロを求めるのは、私たちが肉体を持ったときからの究極の煩悩というか、ついて回るもの。だからこの二つはやっぱり強い。
―起業するまでの経緯を聞きたい。どんな学生だった。
高校生のとき、地球環境問題にはまった。世間では、地球温暖化は二酸化炭素が原因らしいとか、砂漠化が大変なことになっているとか、最近は聞くことが減ったが、オゾンホールが問題になっていた。環境問題にどっぷりはまって、それから「変人生活」が始まった。
―変人生活とは。
電気を付けない。家電は一切持たず、使わない。朝日とともに起きて、夕日でその日は終わり。夜は祖母の部屋に行ったり、大学時代に暮らした横浜では近くに住む姉の部屋に行ったり、あるいは図書館に行ったりして勉強していた。下宿先には電池式のラジオしかなく、月々の電気代は基本料金だけだった。
「アダルトをやらないとだめなんだ」
―就職は地元の群馬に。
地球が大事とか言ってるものだから、東京や横浜は合わなかった。ところが群馬に戻ってみると、就職氷河期で希望する仕事が見つからない。文系だと有名どころは公務員と銀行の二つだったが、どちらも気質的に合わなかった。自動車ディーラーは、地球環境のことを考えると選択肢から外れた。それで「有機農産物を広めよう」とスーパーに入社したが、配属先は鮮魚売り場だった。
―なぜ古書業界に。
当時はブックオフなどが伸びてきて、古本業界が熱を帯びてきていた。そんなとき、...