▼地球温暖化が進むと、今世紀末に海面が1メートル上昇し、巨大台風や高潮などが高い頻度で発生する―

 ▼国連の気候変動に関する政府間組織が公表した温暖化の影響予測報告書の深刻さにりつ然とする。地球規模の危機は、台風による甚大な被害が相次ぐ日本にも確実に、かつてない悪影響を及ぼしている。報告書の警告に、食い止める対策の緊急性を強く思う

 ▼そんなことが頭にあったからだろうか、富岡製糸場の東置繭所で開かれている世界文化遺産登録5周年記念の「花まゆ」展に飾られた「収穫祭」と題する作品を前にして、この危機は、私たちが自然を畏敬する心を失っているからなのだ、と痛感させられた

 ▼天然素材の繭を使って花を形作る花まゆは、繭そのものの色合い、曲線、柔らかさを生かし、新しい命を吹き込む芸術だ

 ▼「繭に花を作らせてもらっているんです」。考案した名古屋市の工芸家、酒井登巳子さんの言葉通り、作品から伝わるのは、小さな蚕の営みへの敬意、自然の恵みを慈しむ姿勢である

 ▼収獲の喜びを表現した「収穫祭」は、揚がり繭を使い、280人が11カ月かけ仕上げた長さ3メートル、高さ1.5メートルもの大作。1万8000もの花々が咲く姿は壮観だ。絹産業の歴史を語る遺産に展示された30点は、かけがえのないものを見失っている私たちの生き方を問うている。