自治会(町内会)を取り巻く環境が厳しさを増している。人口減少や定年延長、地域への関心の低下によって担い手不足が続き、全国で時代に合わせた活動を探る動きが見られる。群馬県内でも自治会の声を受けて市町村が負担軽減に乗り出す例がある。安全安心や環境、福祉を支えてきた住民組織は転換期を迎えている。
自治会は一定区域の住民らが、より良い地域づくりのため共同で運営する組織。区域をさらに細分化し、班や組を置くこともある。2021年4月時点で全国に約29万、県内に約4270の自治会がある。県内では市町村が行政区を設け、自治会長が区長を務めるケースも少なくない。
行政とのパイプ役
普段の生活では、ごみ集積所の管理や行事の開催といった場面で活動を見かけることが多い。市町村の広報紙や配布物を各世帯に届けるのも大きな役割の一つ。民生・児童委員や国勢調査員など各種委員の推薦、行政関係の会議への出席など、住民の目に触れる機会が少ない活動もある。会としては住民と行政のパイプ役も果たしている。
住民や地域にとって当たり前の存在だが、時代の変化に揺さぶられている。
地域への関心が薄い住民からは、地縁を基盤とする自治会活動が敬遠される面もある。自治会からは近年の定年延長の流れを受け、役員の主力となってきた高齢者の確保が難しいという嘆きの声が聞こえる。市町村に対し「配布物が多く、作業が負担になる」「依頼業務が多く、独自の活動をする余裕がない」など負担軽減を求める声も根強い。
全国では川崎市が19年に市からの依頼のガイドラインを作成し、過度な負担を避けるための仕組みをつくった。長野県上田市は自治会に求めてきた各種役職者の選出を見直し、市が交通指導員など複数の役職を直接確保する方針を決めた。
県内に目を向けると、渋川市が本年度、自治会への依頼業務の全般的な見直しに向け、検討を始めた。全105自治会にアンケートを行い、市が依頼する業務の必要性や負担感を調査。広報紙配布など住民生活に日常的に関係する項目が必要性の上位を占めた一方、役員などの人選や声掛けを伴う項目は負担感が大きいとされた。
組織持続の糸口に
住民の自主組織である自治会に対し、市が負担軽減に乗り出すことは依頼業務の多さの裏返しでもある。市幹部は「委託料を支払っているが、それら以外のこまごまとしたお願いが多いのも事実」と認める。ただ社会環境の変化で、これまで通り自治会を維持するのが難しくなるという危機感も強い。負担軽減を持続可能な基盤づくりの糸口にしたいと考えている。
市は「課題を共有し、しっかり検討する。自治会の声を聞きながら、できることから進めていく」と基本姿勢を説明する。当たり前だった関係性の総点検が始まっている。
人数削減 慎重意見も
自治会の負担軽減に動き出した渋川市。今月6日、市自治会連合会(市連、角田雅保会長)から直接意見を聞く「広聴会」を開いた。
市が実施したアンケートでは...