負傷者役の警察官を背負う記者

 10月24日午前8時45分、みなかみ町の谷川岳インフォメーションセンターを3人の警察官が出発した。大きなリュックを背負い、ヘルメットやトレッキングポールをくくってある。県警の山岳捜索救助隊と谷川岳警備隊の合同訓練だ。入社1年目、22歳の記者にとって初めての谷川岳。訓練に同行し、日本3大急登(きゅうとう)の西黒尾根へ向かった。

 登山道はひたすら登りが続き、大きな岩を何度もよじ登る。一般的にセンター(標高715メートル)から山頂のオキの耳(同1977メートル)まで4時間はかかるという。

 隊員は早歩きくらいの速さで軽やかに進む。健脚を自認していたのに、記者は付いていくのがやっと。30分もすると息を整えながら雑談に応じる形になった。「初めて書いた記事って何ですか」。息一つ乱さず普通に尋ねてくる隊員の体力に驚いた。

 木々の間を縫って1時間半。徐々に樹木が減り、森林限界を超えると山並みがあらわになった。そして3時間半後の午後0時15分ごろ、オキの耳に到着。「やっと着いた」。道のりを振り返り、達成感に浸った。

 谷川岳警備隊の渡辺拓也副隊長(34)から「普段は2時間以内で着く」と知らされ、あっけにとられた。登山者のけがや滑落の一報が入ると、彼らはすぐに駆け付けなければならない。