▼小学生の頃までだったろうか。玉村町で養蚕をしていたわが家の周りには桑畑が広がっていた。作業をする祖父母のそばでドドメを取るなど、子どもにとっての遊び場だった

 ▼昔に比べると減ったものの、クワは本県の暮らしに深く結び付いた植物の一つと言っていい。そうしたことも関係するのだろう。前橋地方気象台は1953年以来、クワの発芽と落葉の日付をずっと観測してきた

▼「してきた」というのは、昨年末で観測を終えたから。気象庁は今年から全国の気象台で57種の動植物を対象に行ってきた「生物季節観測」を大幅に縮小した。前橋は植物22種、動物13種を対象としてきたが、今年からサクラなど植物6種だけになった

▼観測は開花や初鳴きなどから季節の遅れや進み、気候の違いを捉えるのが目的。だが気象台周辺の自然環境が変わり、対象を確認するのが難しくなったのが見直しの理由という

▼調べてみると、前橋のクワのように各地の観測対象には特徴があった。札幌や帯広ではライラック、富山はチューリップ、沖縄はデイゴ。地域を象徴する植物が選ばれていただけに、全国統一は味気ない気もする

▼気象庁は生物観察に活用してもらおうと、観測データや手法をホームページで公開している。さまざまな植物が芽吹く春。季節の移ろいを定点観測してはどうだろう。