▼観光名所から日々のランチまで、カメラを構える人を見ない日はない。スマートフォンの普及で世界の年間写真撮影枚数は推計1兆3千億枚以上に膨らんでいる

 ▼スマホに比べると、フィルムカメラにはドキドキ感があった。現像してみたら旅先の記念写真が目を閉じていたり、鮮やかな花がピンボケしていたり。メーカーが乱立し、カメラやレンズの性能差も大きかった

 ▼本県に北関東唯一の精密光学企業があったことはあまり知られていない。県産カメラ「ミネシックス」を生んだ高嶺たかね光学(高崎市)だ

 ▼下請けとして技術を蓄積し、会社設立3年後の1955年、設計から製造まで手掛けた自社製カメラを発売する。改良を加えた2代目は米国や東南アジアに輸出され、県庁には輸出貢献企業として社名入りの看板が掲げられた

 ▼当時カメラは高級品。開発に携わった元社員から「鼻が高かった」と聞いたことがある。会社は順風満帆だったが、取引先の不渡りで57年に解散。同年の新型は100台で販売を終え、「幻の―」と形容される。1枚の写真と同じようにカメラにも物語があると知った

 ▼きょうは1839年に仏で銀板写真が誕生した「カメラ発明記念日」。フィルム、デジタルへと形は変わったが、老若男女がスマホで世界中の事象を記録し共有する社会は、ここに原点がある。