▼世界初の自動車は約250年前にフランスで造られた。大きなボイラーで薪や木炭を燃やして水を温め、蒸気で車輪を動かした。1時間で4キロほどしか走れず、走行実験中に壁に激突。世界初の交通事故を起こした

 ▼1885年にドイツでガソリン車が誕生。日本で造られたのは1907年。ガタクリ、ガタクリと走ることから「タクリー号」と名付けられた

 ▼今や生活に欠かせないが、地球温暖化防止のため脱ガソリン車の動きが加速する。世界の潮流を読み、桐生市から持続可能な社会への転換を訴えてきたのが群馬大名誉教授の宝田恭之さんだ。先月、突然の訃報が届いた

 ▼大きな青写真を示し、産学官を巻き込んで一歩ずつ進んでいく人だった。成果の一つが市内を走る低速電動バス「MAYU」だろう。マイカーを使わずに自宅から半径500メートルの商店で買い物し、生活できる地域づくりを提唱した

 ▼教育にも熱心だった。親子を対象とした「未来創生塾」を立ち上げ、歴史や文化、産業を学ぶ講座を企画した。好評だったのは川に足を浸して本を読む「清流読書」。豊かさの意味を問い掛けた

 ▼昨年11月、荒木恵司市長と「ゆっくりズムのまち桐生」を宣言。これが置き土産となった。「環境とエネルギー問題を通して社会を変えたい」。最期まで理想の未来を語り続けた人生だった。