▼その碑文には、日本が国際社会のためになすべきことが刻まれている。①日本が再び軍事大国にならぬこと②心と心が触れ合う信頼関係を築き③対等な協力者として繁栄に寄与すること―。今なお東南アジア外交の原則として生きる「福田ドクトリン」3原則だ

 ▼福田赳夫首相は1977年、東南アジア各国を歴訪後にフィリピン・マニラでこの基本方針を表明した。44年を経た先月、都内に記念碑が建立され、除幕式が開かれた

 ▼来賓の福田康夫元首相は「40年たってその内容をもう一度かみしめてみる必要がある時期なのではないか」とスピーチ。この原則が今も有用であり、対東南アジア外交の初心として忘れてはならぬ精神の支柱であると訴えた

 ▼ただ、インターネットに掲載された記事に対する多くのコメントは辛辣(しんらつ)なものだった。「アジアは桃源郷ではない」「お花畑思考」などの批判が並んだ

 ▼ささくれ立った言葉の裏には、経済の失速によって自信を失いかけ、不寛容で排他的な思考が広がる現代日本の病理がのぞく。そんな時代だからこそ東南アジア諸国は福田ドクトリンの先見性を今も高く評価するのだろう

 ▼とはいえ、外国人比率が常に全国上位の県民は、多くが実体験を通してすでに知っているのではないだろうか。私たちの社会で隣人と共生するために必要なのは、赳夫首相が説いた「心と心」の信頼関係だということを。