▼ファンは多いが、“食わず嫌い”の人もいるのではないだろうか。視聴者が参加するNHKの音楽番組「のど自慢」である

 ▼筆者もチャンネルを合わせなかった一人だったが、桐生市が舞台になった映画「のど自慢」(1999年、井筒和幸監督)を観賞してから見方が変わった

 ▼映画は、出場者一人一人にドラマがあることを描く。実際の番組でも「病気の家族のため」「母に感謝を伝えたい」と出場理由が披露される。スポットが当たるのは一瞬だが、「人生の主役」たちの姿につい見入ってしまう

 ▼この番組が先月、沼田市を会場に生放送された。出場20組の中に同市の観光施設、サラダパークぬまたの美術館「もりの館」で館長を務める田中博さん(71)の姿があった

 ▼所属するNPO法人郷土利根沼田を守る会が施設の指定管理者となり7年。「地域の芸術文化を発信したい」と当初から地元作家の発掘に努める。年間約40の行事を企画・誘致、宣伝にも力を注ぎ、誘客増の功労者だが、「周囲の協力のおかげ」と決して表舞台に出ない

 ▼そんな田中さんに「長年の夢だった」というのど自慢出場で光が当たった。鐘は鳴り響かなかったが、その姿に拍手を送った関係者は多いはずだ。施設は12~3月、冬季休業に入る。埋もれた才能を探す田中さんの裏方としての仕事が今年も本格化する。