▼上野村に釣りに出掛けた。狙ったのは県が開発したニジマス「ハコスチ」。雑誌やSNSによる情報発信の効果だろうか。平日というのにたくさんの釣り人でにぎわっていた

 ▼釣り人は誰よりもたくさん、大きな魚を釣りたいと願い、釣れる場所は教えない。釣り雑誌ですら大切なことは行間に書いてあると言われるほどだ

 ▼かつて作家の開高健が鬼と呼んだイワナ釣りの名人がいた。秘密のルアーを教えてほしいと頭を下げて頼んだが駄目だった。開高の死から25年がたち、ある人が酒席で種明かしを求めたところ、名人いわく「男っちゅうもんは、別れた女と釣れたルアーのことを決して他人に話してはならない」

 ▼県は先月、SNSで強い発信力を持つ釣り人を対象にした初のハコスチ体感会を上野村で開いた。こちらは魅力を秘密にするのではなく、どんどん発信してもらう試みだ

 ▼体感会には事前審査を通過した15人が参加した。さすが腕自慢が集うだけあって次々とさおがしなり、情報はネットを通じ拡散した。上野村には県外からの釣り客も多く、ハコスチは中山間地の活性化にも一役買っている

 ▼筆者はというと、3時間粘ってやっと1匹釣れたと思った瞬間に逃げられた。釣りには〈一場所、二餌、三に腕〉という格言がある。この日は場所が悪かったとあきらめ、紅葉を楽しんだ。