▼売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」は、豪商と呼ばれた近江商人の心意気を表す言葉として知られる。自らの利益を追求するのではなく、みんなが満足できる商いをして社会へ貢献しようという考え方だ

 ▼この精神を運営方針に据えて商店街の活性化につなげる取り組みが全国で広がっている。「得する街のゼミナール」、略して「まちゼミ」である

 ▼商店主を講師に本業や趣味を生かした少人数制の無料講座を開き、店と客の信頼を築いていく地道な活動。客は専門知識やプロならではのこつを知ることができ、店側には店主のこだわりや人柄、店の特色を直接伝えられる利点がある

 ▼群馬県では伊勢崎や太田、館林で行われている。特に太田は規模が大きく、市内全域に広がる。5年目の今年は先月に1カ月間開かれ、講座数は100に達した

 ▼商店街はどこも厳しさを増すばかりだが、いまだ打開策を見いだせずにいる。そんな中、まちゼミは参加店舗、受講者数ともに増加しているというから期待が持てそうだ

 ▼太田の世話人会代表、竹川幸光さん(50)は「店同士のつながりが生まれ、販路が広がったという話も出てきた」と手応えを口にする。まだ「世間よし」に至るまでにはほど遠い状況だろうが、近江商人の精神を貫ければきっと光は見えてくる。辛抱強く取り組みたい。