▼湯屋から見える山が色づく時季はもっと魅力的だろう。「秘湯復活」の知らせに心躍らせて出掛け、湯に漬かった。南牧村の限界集落、星尾地区で先月営業が始まった「星尾温泉 木の葉石の湯」である

 ▼70年近く前まで公衆浴場として使われていた源泉と、空き家だった古民家を活用し、温泉場としてよみがえった。湯船は大人4人でいっぱいになる。「どこから来たんだい」。目的を共有した仲間意識が初対面の垣根を崩し、会話が弾む

 ▼高齢化日本一に加え、近年は「消滅可能性が最も高い」と称された同村。資金集めから施設整備まで1年半を要した復活プロジェクトは行政に頼らず、民間有志13人で推し進めた。パンフレットには「このままでは集落が消滅します」

 ▼有志の1人で東京のIT関連企業を辞めて村に来た松林建さん(52)は「自動販売機もない村に雇用を生みたい」と語る。産声を上げた小さな温泉場に人が集まり、成長する姿を思い描く

 ▼総務省は本年度、人口減少や高齢化が進む地方に貢献したいと考える都市部の住民を「関係人口」と位置付け、自治体のモデル事業を支援する新たな取り組みを始めた

 ▼プロジェクトに関わった13人も半数以上が村外者だ。関係した人たちがまいた種をどう開花させるか。国や政治家はそれに寄り添えるか。残された時間は長くない。