▼すぐに怒り出す人を癇癪かんしゃく持ち、瞬間湯沸かし器などという。職場にいるとはなはだやっかいで、悪気はないと慰められてもなかなか納得がいかない

 ▼癇癪持ちといえば歌人の斎藤茂吉が有名。風邪で寝込んでいた時に「ぜひお目にかかりたい」と手土産を持ってやってきた客に激怒。病床から起きて客の前に現れ、「風邪で寝ているのが分からんのか」と怒鳴りつけたという

 ▼茂吉の高弟、佐藤佐太郎も実は癇癪持ちで、夫人は苦労したらしい。〈夕光ゆふかげのなかにまぶしく花みちてしだれ桜はかがやきを垂る〉。格調高い歌の数々からはちょっと想像できない姿である

 ▼佐太郎の企画展が6月10日まで、県立土屋文明記念文学館で開かれている。茂吉から結社「アララギ」の編集発行人を受け継いだ文明が媒酌人を務めるなど交流があった

 ▼1909(明治42)年、宮城県生まれ。26(大正15)年に入会すると茂吉に師事した。早くから才能を発揮し、格調と気品ある歌でみるみる結社を代表する歌人となった

 ▼代表作の一つが〈冬山の青岸渡寺せいがんとじの庭にいでて風にかたむく那智の滝みゆ〉。落差130メートルの名瀑めいばくを「風にかたむく」と捉えたところが秀逸。若き日は〈電車にて酒店加六しゅてんかろくに行きしかどそれより後は泥のごとしも〉など親しみある歌も詠んでいる。短歌鑑賞の扉を開くのに、佐太郎は良き案内人だ。