▼〈四里の道は長かった。その間に青縞あおじまの市の立つ羽生の町があった…〉。書き出しが印象的な文学作品は多いが、館林市出身の田山花袋の代表作「田舎教師」もその一つだろう

 ▼小説の舞台は埼玉県羽生市周辺。冒頭の一節は、中学を出て小学校の代用教員になった主人公の青年が、行田の自宅から初めて任地を訪れる場面だ。青年は志を抱きながら、田舎の生活に埋もれ、21歳で病死する

 ▼岩波文庫から「田舎教師」の改版が出た。109年前の作品だが、花袋の描写力に感心させられた。羽生周辺の自然や情景が描かれており、利根川の土手や浅間、赤城、榛名の山々、赤城おろしも登場する

 ▼学校に魚を売りに来た男とのやりとりには引き込まれた。男は「板倉で取れたんだで、骨は柔(やわら)けい」とフナを売り込む。当時、上州産の魚はうまいと評判だったことが記されている

 ▼文庫には作品に関連する場所の地図がある。埼玉と群馬、栃木、茨城にわたっていて、県境を越えて人々が行き交っていたことが見て取れる。板倉町と栃木県栃木市、埼玉県加須市が売り出している「平地の3県境」も小説の舞台に近い

 ▼館林市の田山花袋記念文学館では27日まで、収蔵資料展「『田舎教師』展」を開催中だ。花袋忌の13日と最終27日は入館無料で解説会もある。郷土が誇る文豪の世界に浸ってみては。